世界遺産「宮島」で県が無許可で樹木を伐採

世界遺産で天然記念物の宮島(広島県廿日市市)の弥山原始林で、広島県が文化庁の許可を得ないまま樹木33本を伐採していたことが6月24日分かったという。県は文化財保護法に基づき保全・管理する立場にありながら、同法違反の疑いがあるという。記者会見した環境県民局の福田幸作総括官は「県民の信頼を損ね、おわびする。再発防止に努める」と謝罪した。

現場は、宮島ロープウエーの紅葉山駅から弥山まで続く歩道の近く。県西部農林水産事務所は毎年、歩道の修繕や改良工事をしている。

県によると、2019年10月11日と14日、工事資材をヘリコプターで下ろす際のスペースを確保するため、現場の県の担当者が建設業者に伐採を指示し、直径33センチのアラカシやカエデをチェーンソーで根元から切り倒した。県は必要な文化庁の許可を得ていなかったが、担当者が得ていると誤認していたという。

10月18日に廿日市市教委から「無断で樹木を伐採している」と県へ情報提供があり、発覚した。工事を中断し、21日に現場を調査したところ、無許可伐採が判明。県は3月末、文化庁に事後申請の形で許可を求め、5月22日に樹木の復元と再発防止を条件に受理されたという。

弥山原始林は、宮島の面積の5%にあたる約160ヘクタールあり、29年に国の天然記念物に指定された。52年に全島が特別史跡・特別名勝となり、96年には厳島神社とともに世界遺産に登録された。

枯れて道を塞ぐなどした危険な樹木は、県教委が策定した保存管理計画に沿って伐採が認められているが、それ以外は厳しく規制されている。伐採には文化財保護法に基づく「現状変更」を文化庁へ申請する必要がある。


昨秋把握も知事への報告は8カ月後

県自然環境課によると、無断での伐採が発覚したのは初めて。同法違反の疑いがあるため、県警と連絡を取っているという。

福田総括官によると、10月に事態を把握しながら、湯崎英彦知事に報告したのは記者会見前日の23日。事案を直後に公表しなかった理由について、福田総括官は「隠蔽の意図はなかったが、そこまで思いが至らなかった」と説明するにとどまった。

県は担当職員の誤認に加えて、内部のチェック機能に不備があったとし、工事現場や作業内容の確認を徹底するとしている。(毎日)


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