「広島怪速5号線」二葉山トンネル工事は止められない
12月26日、広島県と広島市が出資する広島高速道路公社(東区)は、広島高速5号二葉山トンネル(東区)の工事契約を巡る不適切な対応で、県民の信頼を損なった責任を取り、石岡輝久理事長が12月31日付で辞任すると発表した。今回の問題で生じた事業費の大幅増額が県と市の両議会で認められ、「事業継続の見込みがついた」と判断した。後任は当面不在とし、職務は向井隆一副理事長が代行するという。
県出身の石岡理事長と市出身の向井副理事長は、月額報酬の10%を3カ月分、自主返納する。契約時の責任を問い、当時の理事長で市出身の高井巌氏と、副理事長で県出身の泉谷伸生氏に対しても年内に、月額報酬に相当する金額の10%を3カ月分、自主的に返すよう求める異例の措置を講じるとした。
4人が返す具体的な金額は「個人情報に当たる」として、公表しなかった。月額報酬も明かさなかった。森永勝総務部長は一連の対応とは別に、契約を担当した元職員にも責任が及ぶ可能性があると明らかにした。
事業費が87億2千万円増える原因となった工事契約は2016年5月に結ばれた。受注業者が3回目の最終見積もりで突然、約100億円を減額するなど不可解な点があるとしている。
二葉山トンネルの事業費増額問題については、トンネル西側の1.4キロを掘る工事を巡り、広島高速道路公社が(東区)と受注した共同事業体(JV)が2016年5月、一部の工事費を意図的に除き契約した。公社の第三者委員会は19年3月、事業費の上限とJVの受注希望額に開きがあったため、公社が契約後の増額をJVに持ちかけ、契約にこぎ着けたと指摘。その後、増額幅は87億2千万円と定まった。(中国)
「セグメント無しでセグメント一式」 広島高速が怪契約
広島高速道路公社が大林組などのJVに発注したシールドトンネル工事で、「セグメント一式」の費用に資材の大半を占める鉄筋コンクリート(RC)セグメントを除外するなど、異例の契約を結んでいたことが分かった。JVが契約金額を上限の200億円に収めようとした“裏技”とみられる。公社が10月26日、除外されていた費用を含めるため、契約金額を増額する方向でJVと協議していることを発表した。
契約の対象は広島市内に整備する高速5号線のシールドトンネル(延長1.4km)の施工や実施設計など。大林組・大成建設・広成建設JVが2016年5月~20年7月の工期で担当している。
公社は15年11月に発表した入札公告に、契約金額の上限は200億円と明記していた。入札には「設計・施工提案交渉方式」と呼ぶ特殊な方式を採用。この方式では、参加申請者がまずトンネルの設計・施工に関する技術提案と、それに基づく見積書を公社に提出する。公社は参加申請者と交渉したうえで、提出された見積書を基に予定価格を算定し、入札を実施する。
落札者は公社と最初に全体的な協定を結んだうえで、2段階で契約を締結する。まず、実施設計やシールドマシン製作などの契約、次に実施設計を踏まえてトンネル本体工事などの契約を結ぶ。1者入札で落札した大林組JVは、16年5月に協定と実施設計などの契約を、17年3月に本体工事などの契約を締結した。金額の合計は、上限の200億円にぎりぎりで収めていた。
しかし、公社によると大林組JVは本体工事などの契約を結ぶ直前、契約金額の増額を求め始めた。いったんは増額しないまま本体の工事契約を結んだものの、その後も増額要求はづづいた。
18年4月以降は、工事の完成に必要だが契約に含まれていない費用があることを、増額が必要な根拠として提示するようになった。当初は難色を示していた公社も、これを受けてある程度の増額はやむを得ないとの姿勢に傾いていた。(2018年11月 日経)
前理事長「事前合意ない」 二葉山トンネル工事契約巡り
12月26日、広島高速道路公社が月額報酬の10%を3カ月分、自主返納するよう求めるとした前理事長の高井巌氏が、広島高速5号二葉山トンネルの工事契約を巡り、契約後に増額するという受注業者との事前の合意は「なかった」と断言した。
公社と受注業者が2016年5月に結んだ工事契約を巡っては、公社の第三者委員会が「事実上の価格交渉など不適切な対応があった」と指摘している。
高井氏は、工事契約の経緯について「ある程度、報告は受けていた」とした上で、「当時の契約に問題はないと思っている」と主張。まず200億円で契約し、その後に増額する約束が交わされたのではないかとの質問には「あり得ない」と否定した。
報酬の自主返納については「第三者委の調査には協力したが、なぜ87億2千万円を増額するかの経緯は聞いていない。まずは公社からの要請と説明を待ち、対応を検討する」と述べた。(中国)
広島高速5号を巡る主な動き
2000年9月 広島高速道路の整備計画に5号を追加
2009年9月 二葉山トンネル周辺の住民の地盤沈下への懸念を受け、事実上の事業凍結
2012年12月 トンネル採掘に沈下抑制の効果が高い工法を採用し、事業再開へ。沈下被害などを踏まえ、高山理事長が報酬の自主返納を表明
2013年2月 トンネルの工事差し止めを求め住民が広島地裁に提訴。18年に請求棄却
2014年3月 トンネルの工法変更を盛り込んだ整備計画に変更
2015年11月 公社が事業費の上限200億円でトンネル工事の業者を公募
2016年2月、4月 受注業者が約300億円の見積もりを提示
2016年5月 公社が主導して一部の工事費を削り、約200億円で契約
2017年2月 受注業者が事業費の増額を要求。18年7月まで再三にわたるも公社は拒否
2018年9月 トンネル採掘工事スタート
2018年10月 工事費を巡る増額問題を公社が発表
2018年12月 採掘機の故障で工事中断
2019年5月 採掘工事を再開
2019年11月 公社と受注業者が事業費を約287億円に増やすことで合意
2019年12月13日 事業費増額と高速2号への連結を含む整備計画の変更に市議会が同意
2019年12月16日 県議会も同意
2019年12月26日 公社が石岡理事長の31日付での辞任と報酬の自主返納を表明

県出身の石岡理事長と市出身の向井副理事長は、月額報酬の10%を3カ月分、自主返納する。契約時の責任を問い、当時の理事長で市出身の高井巌氏と、副理事長で県出身の泉谷伸生氏に対しても年内に、月額報酬に相当する金額の10%を3カ月分、自主的に返すよう求める異例の措置を講じるとした。
4人が返す具体的な金額は「個人情報に当たる」として、公表しなかった。月額報酬も明かさなかった。森永勝総務部長は一連の対応とは別に、契約を担当した元職員にも責任が及ぶ可能性があると明らかにした。
事業費が87億2千万円増える原因となった工事契約は2016年5月に結ばれた。受注業者が3回目の最終見積もりで突然、約100億円を減額するなど不可解な点があるとしている。
二葉山トンネルの事業費増額問題については、トンネル西側の1.4キロを掘る工事を巡り、広島高速道路公社が(東区)と受注した共同事業体(JV)が2016年5月、一部の工事費を意図的に除き契約した。公社の第三者委員会は19年3月、事業費の上限とJVの受注希望額に開きがあったため、公社が契約後の増額をJVに持ちかけ、契約にこぎ着けたと指摘。その後、増額幅は87億2千万円と定まった。(中国)
「セグメント無しでセグメント一式」 広島高速が怪契約
広島高速道路公社が大林組などのJVに発注したシールドトンネル工事で、「セグメント一式」の費用に資材の大半を占める鉄筋コンクリート(RC)セグメントを除外するなど、異例の契約を結んでいたことが分かった。JVが契約金額を上限の200億円に収めようとした“裏技”とみられる。公社が10月26日、除外されていた費用を含めるため、契約金額を増額する方向でJVと協議していることを発表した。
契約の対象は広島市内に整備する高速5号線のシールドトンネル(延長1.4km)の施工や実施設計など。大林組・大成建設・広成建設JVが2016年5月~20年7月の工期で担当している。
公社は15年11月に発表した入札公告に、契約金額の上限は200億円と明記していた。入札には「設計・施工提案交渉方式」と呼ぶ特殊な方式を採用。この方式では、参加申請者がまずトンネルの設計・施工に関する技術提案と、それに基づく見積書を公社に提出する。公社は参加申請者と交渉したうえで、提出された見積書を基に予定価格を算定し、入札を実施する。
落札者は公社と最初に全体的な協定を結んだうえで、2段階で契約を締結する。まず、実施設計やシールドマシン製作などの契約、次に実施設計を踏まえてトンネル本体工事などの契約を結ぶ。1者入札で落札した大林組JVは、16年5月に協定と実施設計などの契約を、17年3月に本体工事などの契約を締結した。金額の合計は、上限の200億円にぎりぎりで収めていた。
しかし、公社によると大林組JVは本体工事などの契約を結ぶ直前、契約金額の増額を求め始めた。いったんは増額しないまま本体の工事契約を結んだものの、その後も増額要求はづづいた。
18年4月以降は、工事の完成に必要だが契約に含まれていない費用があることを、増額が必要な根拠として提示するようになった。当初は難色を示していた公社も、これを受けてある程度の増額はやむを得ないとの姿勢に傾いていた。(2018年11月 日経)
前理事長「事前合意ない」 二葉山トンネル工事契約巡り
12月26日、広島高速道路公社が月額報酬の10%を3カ月分、自主返納するよう求めるとした前理事長の高井巌氏が、広島高速5号二葉山トンネルの工事契約を巡り、契約後に増額するという受注業者との事前の合意は「なかった」と断言した。
公社と受注業者が2016年5月に結んだ工事契約を巡っては、公社の第三者委員会が「事実上の価格交渉など不適切な対応があった」と指摘している。
高井氏は、工事契約の経緯について「ある程度、報告は受けていた」とした上で、「当時の契約に問題はないと思っている」と主張。まず200億円で契約し、その後に増額する約束が交わされたのではないかとの質問には「あり得ない」と否定した。
報酬の自主返納については「第三者委の調査には協力したが、なぜ87億2千万円を増額するかの経緯は聞いていない。まずは公社からの要請と説明を待ち、対応を検討する」と述べた。(中国)
広島高速5号を巡る主な動き
2000年9月 広島高速道路の整備計画に5号を追加
2009年9月 二葉山トンネル周辺の住民の地盤沈下への懸念を受け、事実上の事業凍結
2012年12月 トンネル採掘に沈下抑制の効果が高い工法を採用し、事業再開へ。沈下被害などを踏まえ、高山理事長が報酬の自主返納を表明
2013年2月 トンネルの工事差し止めを求め住民が広島地裁に提訴。18年に請求棄却
2014年3月 トンネルの工法変更を盛り込んだ整備計画に変更
2015年11月 公社が事業費の上限200億円でトンネル工事の業者を公募
2016年2月、4月 受注業者が約300億円の見積もりを提示
2016年5月 公社が主導して一部の工事費を削り、約200億円で契約
2017年2月 受注業者が事業費の増額を要求。18年7月まで再三にわたるも公社は拒否
2018年9月 トンネル採掘工事スタート
2018年10月 工事費を巡る増額問題を公社が発表
2018年12月 採掘機の故障で工事中断
2019年5月 採掘工事を再開
2019年11月 公社と受注業者が事業費を約287億円に増やすことで合意
2019年12月13日 事業費増額と高速2号への連結を含む整備計画の変更に市議会が同意
2019年12月16日 県議会も同意
2019年12月26日 公社が石岡理事長の31日付での辞任と報酬の自主返納を表明

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