ノルマの無限ループ・利益至上主義に変貌した郵便局かんぽ生命

生命保険会社の営業では、顧客と契約すると事務所の壁に顧客名を貼り出し、そこに花飾りをする。朝礼では契約した営業外務員をほめたたえ、一言あいさつをさせる。契約を取り続ければ回りから崇められるが、月の契約が取れずに「ゼロ社員」となったら、上司の長い説教が待っている。さらに契約ゼロが続けば今度は親兄弟などの身内のところへ行ってこい、となる。頼みに行くほうも苦痛だが、話を持ってこられたほうも苦痛。そんな環境に耐えられなくなり、退職へと進む。

営業はノルマの無限ループだが、そんな利益至上主義的な民間生命保険会社の日常が、郵便局内で行われていたという。「働き方改革」は、ただの妄想だったのだろうか。


「郵便局は安心」逆手に かんぽ生命の保険料二重払い

「競争のシステムを根本的に変えないと、被害は減らない」と語る男性局員。「高齢者に的」「上司黙認」「営業成績で格付け」 中国地方の局員、内情語る

かんぽ生命保険の保険料を故意に二重払いさせていた問題は、「郵便局は安心」という顧客の信頼に乗じた悪質さが透けて見える。保険商品を委託販売する中国地方の郵便局関係者が、その詳しい手口を語った。局内には営業成績によって販売員を格付けする制度があり、激しい競争をあおる環境が不当な契約を横行させたとの見方が強い。

「ターゲットになるのはほとんどが高齢者。販売員を信じ切って『ええがにしてくれりゃあええよ』と任せきりなケースが多い」。50代の男性局員はそう証言する。今回発覚した二重払いは、乗り換え契約でありながら旧保険の保険料もダブルで払わせていた。

郵便局の社内基準では、乗り換え契約から6カ月以内に解約がない場合は「新規契約」と見なすルールがある。新規契約の方が乗り換え契約の2倍の営業成績が得られるため、販売員は旧商品の解約を引き延ばそうと誘導する。内部で「乗り換え潜脱(隠し)」と呼ばれる手法だ。「来年解約したほうが率がいい」「しばらくは新しい保険が有効にならないかも」そう言って高齢者を説き伏せるという。

乗り換えを隠す手段としてもう一つ、保険の空白期間をつくる方法があることも証言から分かった。旧保険の解約から3カ月を超えてから、新保険の契約を結べば新規契約と見なされるルールに基づく。契約者は少なくとも3カ月は無保険になる恐れがある。

これらの不当な契約は、組織ぐるみで慣例化していたとみられる。男性局員は「契約は上司の承認が要る。上司も不正な契約を黙認している」と明かす。かんぽ生命保険の営業担当向けガイドブックには「不適正なケース」として、乗り換え契約を隠すための虚偽説明の具体例を掲載している。「こうすれば成績が稼げると、手口を教えているようなもの」と語る。

厳しいノルマ

悪質な営業がまん延する背景には、販売員間や郵便局間の熾烈な競争や厳しいノルマがあるとされる。局内には成績で販売員を区分する「格付け」制度があり、保険料や契約内容によって成績優秀者が認定される。ホテルで接待などの厚遇を受け「神のようにあがめられる」という。

一方で、成績が悪い販売員は手当などで冷遇されるだけでなく、叱責や、いじめを受けることもあるという。営業成績が低い販売員を対象にした「研修という名のパワハラ」もあるという。「真冬でも『おまえらに暖房代はもったいない』と暖房を切られることもある」

「意向を無視」

中国地方の郵便局に勤務していた元局員は「自分の手当や職場での地位を守るため、お年寄りを相手に悪質な販売を繰り返している」と指摘。「解約したい顧客の意向を無視するケースも繰り返されていた。泣く泣く諦めた高齢者も多いのではないか」と打ち明けた。

日本郵便中国支社(広島市中区)はノーコメント

日本郵便中国支社(広島市中区)は「中国支社では答えられない」とコメントし、回答できない理由の明言も避けた。かんぽ生命保険(東京)は「不正販売とみられる契約については、販売員の説明内容や顧客の意向を確認する。その上で、不正と認められれば担当者の厳正な処分、保険料の返金をする」と説明。契約確認などは各郵便局か、かんぽコールセンターで受け付けるという。(中国)

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