広島の斜面の宅地に住むべきか

広島市周辺の宅地開発について、広島市編さんの「広島新史地理編」(1983年刊)によると、「山地・丘陵は大半が風化の著しい花こう岩からなり、集中豪雨で斜面崩壊や土石流を起こす危険がある。近年の宅地開発で斜面崩壊の危険性は増加している」と記されているという。


斜面の土地は平地より安価

西日本豪雨による広島市の犠牲者23人のうち18人が安芸区。「危険な場所だと思っていなかった」。安芸区矢野東7丁目の団地「梅河ハイツ」で被災した田口武史さん(73)は言う。団地の山際には昨年2月、治山ダムが完成した。しかし、土石流はダムを乗り越え、団地で5人が犠牲になった。約40年前に建てた田口さんの自宅は全壊した。「当時、土地の安さと広さが購入の決め手だった」。

広島県内は7割を山地が占める。高度成長期、人口の増加で住宅需要は一気に膨らみ、広島市郊外の丘陵地は次々と切り開かれた。平地に比べ安価で人気を集め、市民の生活圏は山裾に接近した。

5年前の広島土砂災害で10人が亡くなった安佐南区八木4丁目の八木ケ丘団地は災害後、国が造った砂防ダムが渓流ごとそびえる。「手が届く価格で、早く買わなければなくなってしまうと思った」。69年、24歳で家を建てた山本強さん(73)が振り返る。

山本さんが当時の「分譲価格表」を保管しており、1坪9500~5500円で山に近いほど安い。大卒の初任給は当時3万6千円ほど。山本さんは50坪を30万円で購入した。裏山は石が多く、雨で崩れることはないと思っていたが、5年前、土石流が自宅の約50メートルまで迫った。

宅地開発の規制は、69年施行の都市計画法で本格的に始まった。既に宅地ができていた八木地区の斜面は、開発の制限区域に指定されなかった。危険なエリアの開発を抑制する法整備は後手に回った。


新しいほど被害が大きい

広島土砂災害や西日本豪雨で被害が目立った県内の山際の宅地。被害は、新しく建てられた住宅の方が大きいとのデータがある。広島大の中田高名誉教授(自然地理学)は、航空写真から広島土砂災害で被災した八木3丁目の住宅の建設時期を推定。47~74年に完成した401棟で犠牲者が出たのは6棟(1.5%)。一方、その後から2014年までに建てられた259棟では14棟(5.4%)で住民が死亡した。

「特に直近20年間に建てられた家の被害が大きい。山際に残っていた、リスクの高い土地に建てられた可能性がある」と中田名誉教授は分析する。


土地価格が2割下落したが1年で回復

宅地建物取引業法は、不動産業者に、土砂災害警戒区域内に家を建てたり借りたりする顧客との契約時、災害リスクの説明を義務付ける。「説明はする。でも、斜面でも便利な場所なら家や宅地は売れる」と安佐南区の不動産業者。広島土砂災害の被災地周辺の土地販売価格は直後、2割ほど下落したが、1年ほどで回復したという。


中田名誉教授は「安さという経済的な価値が、命の価値とてんびんに掛けられていないか。危険な場所に住まわせないよう、現行法制度よりも踏み込んだ政策を国や自治体は真剣に考えるべきだ」と指摘する。(中国)




広島市安佐南区 土砂災害

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