第68回平和記念式典と平和宣言(2013年)

8月6日、広島市の平和記念公園では平和記念式典(原爆死没者慰霊式・平和祈念式)が開かれ、被爆者や各都道府県の遺族代表、安倍首相、市民ら約5万人が犠牲者を悼み、平和への誓いを新たにした。午前8時からの式典には、海外から70か国と欧州連合(EU)代表部の代表も出席。核保有大国では米、英、仏、露が大使らを送り、米国のルース大使は2010年以来、3度目の参列となった。

また、映画「プラトーン」や「JFK」で知られるアメリカの映画監督、オリバー・ストーン氏(William Oliver Stone)が参列したという。

この1年の間に死亡が確認された被爆者5859人の名前を書き加えた死没者名簿が原爆死没者慰霊碑に納められ、名簿は計104冊、死没者数は28万6818人となった。3月末現在の被爆者は全国で20万1779人。前年同期から9051人減った。平均年齢は78.8歳となり、前年より0.7歳上がった。


【平和宣言】

あの日から、68年目の朝が巡ってきました。

1945年8月6日午前8時15分、一発の原子爆弾により、その全てを消し去られた家族がいます。

「無事、男の子を出産して、家族でみんなで祝っているちょうどその時、原爆が炸裂。無情にも喜びと希望が新しい命とともに一瞬にして消え去ってしまいました」

幼くして家族を奪われ、辛うじて生き延びた原爆孤児がいます。

苦難と孤独、病に耐えながら生き、生涯を通じ、家族を持てず、孤老となった被爆者。「生きていて良かったと思うことは一度もなかった」と、長年にわたる塗炭の苦しみを振り返り、深い傷跡は今も消え去ることはありません。

生後8ヵ月で被爆し、差別や偏見に苦しめられた女性もいます。

その女性は、結婚はしたものの1ヵ月後、被爆者健康手帳を持っていることを知った途端、優しかった義母に、「あんたー、被爆しとるんねー、被爆した嫁はいらん、すぐ出ていけー!」と、離婚させられました。

放射線の恐怖は時に人間の醜さや残忍さを引き出し、いわれのない風評によって結婚や就職、出産という人生の節目節目で多くの被爆者を苦しめてきました。

無差別に罪もない多くの市民の命を奪い、人々の人生をも一変させ、また、終生にわたり心身を苛み続ける原爆は、非人道兵器の極みであり、「絶対悪」です。

原爆の地獄を知る被爆者は、その「絶対悪」に挑んできています。

辛く厳しい環境の中で被爆者は怒りや憎しみ、悲しみなど様々な感情と葛藤し続けてきました。

後障害に苦しみ、「健康が欲しい」、「人並みの健康をください」と、何度も涙する中で、自らが悲惨な体験をしたからこそ、「他の誰も私のような残酷な目にあわせてはらない」と、考えるようになってきました。

被爆当時14歳の男性は訴えます。

「地球を愛し、人々を愛する気持ちを世界の人々が共有するならば、戦争を避けることは決して夢ではない」

被爆者は、平均年齢が78歳を超えた今も平和への思いを訴え続け、世界の人々がその思いを共有し、進むべき道を正しく選択するよう願っています。

私たちは苦しみや悲しみを乗り越えてきた多くの被爆者の願いに答え、核兵器廃絶に取り組むための原動力とならねばなりません。

そのために広島市は、平和市長会議を構成する5700を超える加盟都市とともに、国連や志を同じくするNGOなどと連携して2020年までの核兵廃絶を目指し、核兵器禁止条約の早期実現に全力を尽くします。

世界の為政者の皆さん、いつまで疑心暗鬼に陥っているのですか。

威嚇によって国の安全を守り続けることが出来ると思っているのですか。広島を訪れ、被爆者の思いに接し、過去にとらわれず、人類の未来を見据えて信頼と対話に基づく安全保障体制への転換を決断すべきではないですか。

広島は、日本国憲法が掲げる崇高な平和主義を体現する地であると同時に、人類の進むべき道を示す地でもあります。

また、北東アジアの平和と安定を考えるとき、北朝鮮の非核化と北東アジアにおける非核兵器地帯の創設に向けた関係国の更なる努力が不可欠です。

今、核兵器の非人道性を踏まえ、その廃絶を訴える国が着実に増加してきています。また、米国のオバマ大統領は、核兵器の追加削減交渉をロシアに呼びかけ、核軍縮の決意を表明しました。そうした中、日本政府が進めているインドとの原子力協定交渉は、良好な経済関係の構築に役立つとしても、核兵器を廃絶する上では障害となりかねません。

広島は、日本政府が核兵器廃絶を目指す国々との連携を強化することを求めます。

そして、来年春に広島で開催される軍縮不拡散イニシアチブ外相会合においてはNPT体制の堅持・強化を先導する役割を果たしていただきたい。

また、国内外の被爆者の高齢化は着実に進んでいます。被爆者や黒い雨体験者の実態に応じた支援策の充実や、黒い雨降雨地域の拡大を引き続き要請します。

この夏も東日本では、大震災や原発事故の影響に苦しみながら故郷の再生に向けた懸命な努力が続いています。

復興の困難を知る広島市民は、被災者の皆さんの思いに寄り添い、応援し続けます。

そして日本政府が国民の暮らしと安全を最優先にした責任あるエネルギー政策を早期に構築し、実行することを強く求めます。

私たちは改めてここに68年間の先人の努力に思いを致し、「絶対悪」である核兵器の廃絶と平和な世界の実現に向けて、力を尽くすことを誓い、原爆犠牲者の御霊に心から哀悼の誠を捧げます。

平成25年8月6日 広島市長 松井一實
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