おもちゃのような被爆再現人形程度では伝わらない

7月5日、原爆資料館の全面改装に伴う「被爆再現人形」撤去を巡り、反対の署名運動が起きていることについて、松井一実市長は7月4日の記者会見で、現時点では予定通り撤去する意向を示し、人形に代えて実物を中心に展示する方針に理解を求めたという。一方、「人形がなければ困るということが続くようであれば、技術的な工夫で何らかの方策を考える余地を残したい」と代替案の検討には含みを持たせた。人形の撤去方針を巡っては、今年3月に始まったインターネットでの反対署名が6000筆を超えた。松井市長は「目で見て簡単に実感できる方が感動を受けるだろうという意見は決して否定できない」としながらも「一部の被爆の状況を切り取って残すよりは、被爆の実相を、その時あったいろいろな資料で理解していただく方がいいだろうとなっている」と話した。(毎日)

被爆者の写真で思い出深いものが3つある。1番目は、顔に斑点のある兵士の写真だ。この写真を初めて見たのは、中学生の頃だった。学校の図書室に分厚い原爆の本があった。本の裏には誰がいつ借りたかが分かるようにカードが貼りつけてあったが、誰も借りた形跡がなかった。そんな本をなぜか良く見ていた。この写真は大人になって見ても恐怖は感じないが、当時、中学生の頃は何度見ても気味が悪かったことを覚えている。

広島原爆被爆者01


2番目は、肌がひどく荒れ果てた写真だ。この被爆者に自分を置き換えて考えるこがある。果たして社会で生き続けることが出来るだろうか。明日はあるのだろうか。死にたくても死にきれない時、自分はどうするのだろか。

広島原爆被爆者02


3番目は、長崎の被爆少女「全身熱傷の少女」の写真だ。これは数年前に知った写真で、インターネットで良く見かけるが、どれも詳しく内容が書かれていない。調べてみるといわく付きの写真だった。

被爆少女


昭和53年5月、原子爆弾の洗礼を受けた広島・長崎両市はニューヨーク市の国連本部の1階ロビーで当時の状況を伝える65点の原爆の写真を展示する予定であったが、この写真のうち、原爆の熱線で火傷やケロイドを負った人の写真について国連事務局から「残酷すぎるので写真を差し替えるなどの配慮をしてほしい」と、両市に申し出があったものである。両市は「原爆の実相を伝えるには欠かせない写真だ。何としても展示を実現させたい」と国連事務局に働きかけた。問題になった写真は、「全身熱傷の少女」2枚、「熱線熱傷」(カラー)1枚、「広島市の火傷とケロイドが出ている写真」2枚で計5枚。これらの写真は日本国内では平和文化センター(広島市)、国際文化会館(長崎市)に展示されたほか、出版物を通じて国内外に広く知れ渡っている。つまり、被爆写真の展示に国連がクレームを付けた写真だったのだ。

以前、「原爆資料館は美術館」と書いたが、今の原爆資料館の内容と被爆人形では実情を伝えるには程遠いだろう。絵でも伝わるが、全ての人に伝わるとは限らない。絵は絵でしかない。写真は実物を写しているから絵よりも説得力がある。しかし、それは平面での表現にとどまるため、当時の現実的な様相を表現するには今ひとつ迫力と説得力に欠ける。大人の目から見ても恐怖と憎悪を脳裏と心に焼き付けさせ、鳥肌と吐き気までも催すような演出でなければならない。そのためには、これらの写真をそっくりそのまま実物大に作成し、熱線でケロイドと化した皮膚も本物と同等に作成し、そこにはまさに当時の被爆者が横たわり、その目は原爆資料館を訪れた人々の平和な生活を恨めしそうに見つめながら苦しんでいる様相、つまり生と死の狭間を彷徨う被爆者が、原爆による放射線地獄から虫の息ほどの助けを求めているような状態を極限まで表現する必要がある。



広島原爆投下
ヒロシマ原爆投下直後


広島平和記念資料館(原爆資料館)は美術館?

関連記事

Comment













非公開コメントにする
Trackback

Trackback URL