袋町のお食事処「こがね食堂」が閉店

広島市の繁華街で、半世紀にわたって多彩なメニューを提供し続けてきた「こがね食堂」(中区袋町)が11月10日、閉店したという。経営環境の変化や働き手の高齢化などから、店主の長谷川慎さん(60)が決断したという。9月の閉店告知以降、「古き良き名店」の味を惜しむ人々が連日詰めかけたという。

この店の特徴は、まずお店に入ると左手に、真っ黒の”だし”に、”こがね色”をした「おでん」が目に飛び込んでくる。その奥のガラスケースの中には煮魚やハンバーグ、野菜サラダ、ひじきの煮付けなどが並んでいた。つまり、速攻で食事にありつけるシステムだ。味は普通で大衆料理店といったところだが、質素な家庭料理と、広めの店内が妙にリラックスできた。似たような食事処では、立町方面に「千成」というお店があったが、今ではもうそのお店は無い。


こがね食堂は1967年、山口県徳山市(現・周南市)で食堂を経営していた充扶さん、岐美枝さん(87)夫婦が開業。屋号は、店先で焼いて売り出した「こがねまんじゅう」にちなんだ。高度経済成長時代、周辺ではビール会社や生命保険会社などの大手企業が次々と進出していた。

まだ飲食店は数店しかなかったが、岐美枝さんは「主人は当時から、袋町周辺が発展することを見抜いていた」と振り返る。店には、すぐにスーツ姿の会社員が昼食に押し寄せた。食事をしながらの会議も開かれるようになった。

 「満員の中で待たせてはいけない」と冷蔵ケースにおかずを並べるようにして、「お客さんに仕事終わりの一杯を提供しよう」と酒もメニューに加えた。

70年代のオイルショックによる不景気を何とか乗り越え、82年、東京の大学で会計を専攻した慎さんも帰郷して充扶さんと共に調理場に立った。「父が育てた店を変わらずに引き継ぎたい」との思いだったという。

一方で、半世紀の月日はこがね食堂を巡る環境を大きく変えた。岐美枝さんが「店を始めた時と比べて、この辺りもビルが増えてきれいになった」と話す通り、おしゃれな繁華街になるにつれて店の維持費も高くなり、飲食店の過当競争も始まった。

今年、慎さんは還暦、岐美枝さんも数えで米寿を迎えた。経営努力を重ねて手ごろな価格で提供し続けてきたが、「看板を下ろすのに、ふさわしい時期が来たのでは」と家族で話し合い、閉店を決めた。9月中旬、店先に閉店を知らせる貼り紙を掲げると惜しむ声が上がり、この1カ月は連日大勢のお客が押し寄せたという。(読売)




御食事処こがね
関連記事

Comment













非公開コメントにする
Trackback

Trackback URL

スポンサーリンク

広告