なぜ中小零細企業は入社時に雇用契約書を交わさないのか

ブラックバイトにブラック会社。入社する時に雇用契約書を交わすのが一般的と言われるが、実は日本の中小零細企業の大半が労働条件を書面で明示しない。正社員であれバイトであれ、企業に採用されると、出社初日に労働条件についての説明が書面でなされるのが一般的だ。しかし、ここまでご丁寧に実践する会社は、一部の企業だけだろう。では、なぜ書面で説明しないのだろうか。


通常は、会社は人を雇用した場合、試用期間内であっても労働条件を示した書面を雇用された人と記名・捺印し、双方で保管する。これを会社が嫌がる理由は、仕事の内容によっては、労基法の定める労働時間内に終わることが少ないから、雇用主は書面で雇用契約書を結びたがらないと考えられる。さらに休日出勤の強制や不合理な給料の減額などが蔓延しているとなおさらだ。さらに試用期間内においては社会保険に加入させないという会社も多い。


労働基準法第15条では、労働者の雇入れに際し、使用者は労働条件を書面により明示すべきことを義務づけている。書面による明示が義務付けられている事項を列挙してみると、


労働契約の期間
就業場所、従事する業務
始業・終業時刻
所定労働時間を超える労働の有無
休憩時間
休日・休暇
賃金および支払の方法、時期
退職に関する事項

ということになる。


さらに職業安定法第65条第8項では、虚偽の広告をなし、又は虚偽の条件を呈示して、職業紹介、労働者の募集若しくは労働者の供給を行つた者又はこれらに従事した者については罰則規定があり、「6月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。」とされている。


書面による労働条件の明示がなく、雇用契約書もない場合、後に会社とトラブルになったときに何を証拠にすればいいのだろうか。そんなときは以下のような凡例が参考になりそうだ。


労働条件の明示がない場合に、何をもって労働契約締結の際の労働条件とみるかについては、公共職業安定所の紹介により成立した労働契約の内容は、当事者間において求人票記載の労働条件を明確に変更し、これと異なる合意をする等、特段の事情がない限り、求人票記載の労働条件のとおり定められたものと解される(千代田工業事件昭58.10.19 大阪地裁決定)。


過去に、労働基準監督署に相談に出向いたとき、窓口担当者が「ハローワークの募集内容と雇用契約書の内容は、必ずしも同じではないですから」と言い切ったことが印象的だった。つまり、それだけ雇用条件に関する相談が多いということを物語っている。


パートであれ正社員であれ、会社に採用されたときには必ず「雇用契約書」を交わすのか、確認すべきだろう。しかし、個人商店のような会社や個人商店そのものである場合には、そんなものは無いと言われるから、簡単な書面をつくってもらうようにすべきだろう。
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