【日の丸・君が代の呪縛再考シリーズ6】その他全国の学校問題

埼玉県立所沢高校以外の学校の動きを取り上げてみた。以下の記事は1999年代の朝日新聞からの引用。


1999年3月4日
指導強化、他府県でも日の丸、君が代「式で徹底を」
卒業式や入学式での日の丸と君が代について、広島県教育委員会は職務命令を高校の校長あてに出したが、東京三重神奈川などでも、通知や口頭による指導で徹底するよう求めていた。いずれも昨年、文部省が3年ぶりに行った調査で実施率が低かった都県で、文部省の強い是正措置を受けていた。掲揚場所や式次第の形式にまで踏み込んで指示する例も出ている。

式次第、指示の例も
「(掲揚、斉唱に)妨害行為があれば、き然とした措置をとる。今までとは違います。ぜひ校長をサポートしてほしい」
神奈川県では、高校入試で忙しい2月19日、全県立高校の教頭が急きょ集められた教頭会の席で、県教委の幹部が力説した。高校の卒業式における去年(1998年)の君が代斉唱率は全国で3番目に低い6.0%だった。教頭会の1週間前に開かれた定例の校長会議でも、「改めて徹底をお願いしたい」とする教育長名の通知が配られ、実施率を示す資料が添付された。教委は、校長会の幹部に「通知は限りなく命令に近いと受け取って欲しい」とも伝えた。さらに、「君が代は生徒の聞こえる場所、聞こえる時間に」といった口頭での注意も繰り返してきた。

斉唱率が3.9%だった東京都では昨年11月(1998年)、「国旗掲揚及び国歌斉唱の徹底について」と題した通知を、都教育庁指導部長名で高校の校長あてに出した。翌月には、君が代の歌を録音したテープを全高校に配った。

通知には、「実施指針」が添付され、日の丸については「式典会場の正面に掲げる」「保護者、その他来校者に十分に認知できる場所に掲揚する」などと指示。また、君が代に関しても、「式次第に『国歌斉唱』を記載する」「式典の司会者が『国歌斉唱』と発声する」といった点まで細かく指導している。

同庁高等学校教育指導課の小林明主任指導主事は「学習指導要領に則して、国旗に対する尊敬の気持ちを育てる。その趣旨を生かせる形を具体的に示したまで」と話す。

三重県教委は今年初めて、日の丸、君が代について「適正な取り扱い」を求める・・・

これに先だって開かれた校長会で、教育次長が趣旨を説明している。

去年(1998年)の斉唱率は4.8%だった。同県学校教育課によると、これまで君が代斉唱を広く解釈して、ブラスバンド演奏やテープのBGMを流すだけでも「実施」と分類してきた。しかし、斉唱をきちんと調査した結果、実施率は前回の1995年調査より6.5ポイントも下がった。このため、文部省から説明を求められ、その際に指導要領に沿った指導を要請されたという。

文部省の通達背景
日の丸、君が代に関して、改めて指導が強められてきた背景の一つに、昨年7月に出された教育課程審議会(三浦朱門会長)の答申がある。このなかで「指導の徹底を図る」と明記された。さらに昨年、文部省は斉唱・掲揚の実施率を3年ぶりに調査。その結果を発表した10月、指導の徹底を求める通達を都道府県・政令指定都市の教育長あてに出した。実施率の低い県に対しては、文部省初等中等教育局などの幹部が機会あるごとに教育長らに是正を求めてきた。

昨年の文部省調査によると、高校の卒業式での君が代斉唱率は、低い順に東京都3.9%、三重県4.8%、神奈川県4.8%。校長が自殺した広島県は18.6%だった。一方で、100%実施が32県あった。


1999年3月6日
対立潜めじわり定着「日の丸・君が代」
広島県立高校の校長の死をきっかけに、日の丸・君が代問題が再燃している。朝日新聞社は、全国47都道府県の教育委員会の教育長と主要な高校教職員組合に対し、法律で国旗・国歌と定めることへの是非やこの春の卒業式の様子などを尋ねた。卒業式が成立しなくなるような対立は影を潜め、「国旗」「国歌」として定着させる指導がじわじわ強まっている実態が浮かびあがった。政府内では法制化への動きが急だが、教職員組合側は疑問視する意見が強く、教育委員会側も推進論、慎重論に意見が分かれている。

大阪のある府立高校では卒業式前日の2月23日、君が代を流そうとする校長を、実行委員会の約15人の3年生が2時間にわたって説得した。3年生へのアンケートでは過半数が「反対」。だが、校長は折れなかった。府教委や組合によると、テープ演奏が終わるまで入場しなかったり、「君が代を式にもちこまない」と職員会議で決め、経緯を記した文書を事前に保護者に郵送したりした例もあった。こうした表だったトラブルは少なくなっている。だが、納得した結果とは限らない。

宮城県教委は、「職員会議の結果を尊重し、強くは求めない」方針で、88の高校のうち12校の卒業式で君が代斉唱を見送ったが、県高教組は「日の丸・君が代の実施が、管理職の査定の条件のようにされているようだ」と懸念する。

北海道高校教職員組合によると、「校長が隣の学校がやっているのに、うちだけやらないわけにはいうかない」と、やろうとする例もあるという。

問題のとらえ方は、地域によってかなりばらつきがある。1991年度には小学校教諭ら13人を懲戒処分にするなど、厳しい態度で臨んでいた福岡県(福岡と北九州を除く)も今では完全実施。県教委幹部も「広島では今もこんな激しい議論が行われているのかと驚いた」という。

法制化の動きには、各地で意見が分かれた。熊本県の佐々木正典教育長は「国際社会の中で国旗に対する認識が薄いのは日本だけ。日の丸、君が代とも定着一般的には定着しており、根拠を明確にする意味でも法制化すべきだ」。

茨城県の川俣勝慶教育長も「強制はよくないが、国旗・国歌として考えるのはいいことだと考えている。今は『自分が日本人だ』という意識が薄く、国歌・国旗は国民意識を高める象徴になる」とする。

一方で愛知県の伊藤教育長は「法制化しないと全国の大人や子どもが敬意を表せないのだろうか。そもそも今回の事件も国旗・国歌として認められていないから起こったのだろうか」と疑問を抱く。

福井県の稲沢俊一教育長は「五輪や国体などでは抵抗が少ないようだが、学校現場に集中して論じられることに疑問がある」と話す。

奈良県では1987年に、小学校の入学式で親が日の丸を引き下ろした。県教委はこれをきっかけに管理職と教職員だけでなく、地域住民も含めて周知するよう努めてきた。天根俊治教育長は「心がこもっていなければ歌ってもだめだと思う。強要ではなく、理解に努めたい」と話している。

1999年3月6日
日の丸・君が代・都立工業高校・文書で職務命令
東京都立小石川工業高校(新宿区)の奥村裕司校長が6日の卒業式で日の丸掲揚・君が代斉唱を実施するために、教職員に文章で職務命令を出したことが分かった。都教委によると、日の丸・君が代問題で校長が職務命令を文書で出すのは聞いたことがないという。文書は「卒業証書授与式にかかわる職務遂行について」と題し、「国旗を掲揚するとともに国歌を斉唱するものとし、卒業式実施にかかわる担当業務を遂行すること」を命じている。

奥村校長は「今年度、都教委から国旗・国歌の取り扱いなど式のあり方について具体的な通知があった。その指導に沿って厳粛な生徒の心に残る式を行うため、それぞれの担当業務を果たしてほしい命令を出した」と話している。

東京都では、掲揚されていた日の丸を引き下ろした教員が1996年に減給処分になった例があるが、今回の場合、教職員が割り当てられた仕事をしなかったという「不作為」でも職務命令違反で処分することができる。この点について、奥村校長は「仮に斉唱しない教師がいたとしても、この命令をもって処分するという性質のものではない」としている。都教委によると、同校では昨春の全日制の入学式で日の丸を始めて掲揚した以外は、不実施が続いてきた。


1999年3月9日
都立大山高校卒業式・教職員の6割欠席・日の丸掲揚めぐり対立
東京都立大山高校(板橋区)(井平校長)で、6日行われた全日制の卒業式で、日の丸掲揚をめぐって管理職と教職員が対立、教職員の6割が欠席していたことがわかった。同高校によると、卒業式ではこれまで日の丸の掲揚も君が代の斉唱もしていなかった。昨年の都教委の指導を受け、校長が日の丸掲揚を教職員に提案。反発した教職員と前日夕方まで協議を重ねたが決裂した。

このため、校長と教頭ら管理職とPTAの数人だけで卒業式の準備を行った。卒業式の当日は、日の丸が正門前に掲げられたが、君が代斉唱はなかった。欠席した教職員は式の間、職員室などで待機していたという。卒業生の女子生徒は「先生の欠席がもっと早く分かっていれば、自分たちなりの思い出に残る卒業式が作れたのに・・・」

ある母親は、「日の丸・君が代に個々の意見があるのは分かるが、生徒への思いやりがあれば、別の対応があったのでは」と話していた。


1999年3月20日
国立市の中学卒業式で日の丸掲揚反対・市民動く
国立市内の3中学校で19日、卒業式が行われ、日の丸掲揚・君が代斉唱に反対する市民や生徒の父母らが各校を訪れて掲揚・斉唱の中止を申し入れた。同市ではこれまで小・中学校全校で式典での掲揚・斉唱が実施されておらず、市教委は、各校に職員を出したが、卒業式会場での掲揚と斉唱は見送った。しかし、市教委は「校内で一時日の丸を掲揚した」としている。

市教委によると、日の丸・君が代の義務化が実施された1990年以降、市内のすべての小、中学校の卒業式、入学式で掲揚、斉唱を実施していない。同市では90年、市議会が日の丸掲揚と君が代斉唱の強行取りやめを求める決議を可決。都教委によると昨年度の卒業式で日の丸掲揚実施率ゼロの自治体は都内で国立市だけだという。

今年1月、市教委は市内の小、中学校長に日の丸掲揚、君が代斉唱の実施を求める通知を出した。一方、反対する市民らの「子供が主体になる学校行事を求める会」は同日までに、「日の丸・君が代の強制は憲法上の思想及び良心の自由の侵害」として、中止を求める要望書を市教委に出していた。

市教委によると、各校の校長は掲揚・斉唱の意向示していた。これに対し、教職員組合や市民グループが、未明から各校で待機し、監視する形となった。市教委職員も朝から各校を訪れ、校舎や校長室への立ち入りをめぐって言い争う場面があったが、卒業式は予定通り行われた。

市教委によると、3校のうち2校で屋上に、1校で校長室とベランダに日の丸を一時出したという。市教委の杉山雅勇・学校指導課長は「これまでも学校指導要領の趣旨に基づき実施を求めてきたが、保護者や市民の反対もあって難しい状況だった。式場以外でも校内で掲揚したことは一歩前進」としている。

「求める会」側は「反対を押し切って掲揚を強行しようとする市教委の姿勢は認められない」としている。
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