前田元検事が事件手記をヤフーで連載

大阪地検特捜部の押収資料改ざん事件で証拠隠滅罪に問われ、懲役1年6月の実刑判決を受け、服役した前田恒彦元検事(48)が、事件を振り返る初めての手記を発表するという。検索サイト「ヤフー」で12月28日から連載を開始するという。前田氏についての初期の事件報道と画像についてはすでに削除してしまったが、犯罪事件などではときどきコメントを発信している。


関係者によると、前田氏は平成22年9月の逮捕直前から、検察当局の取り調べ状況などを詳細に記録。手記では資料改竄の経緯に言及するとともに、捜査に携わった検察幹部の発言などについても実名で取り上げ、検察内部の状況を振り返るという。

出所後に行った講演では、事件について「調書の内容と違う事実もあるが、(捜査当局側に)都合の悪い話は握りつぶされる。刑期を終えてから機会があれば語ろうと思っていた」などと発言していた。

手記はヤフーのニュースサイトで月3回程度のペースで掲載。初回の記事など一部を除き、登録会員向けに有料で公開するという。ヤフーの広報担当は「事件の反省を踏まえて刑事司法改革などの論点について考察する内容で、社会の課題を解決する一助になると考えている」としている。

前田氏は主任検事を務めた郵便不正事件で、厚生労働省元係長宅から押収したフロッピーディスクの文書の更新日時を書き換えたとして証拠隠滅罪に問われ、23年4月に懲役1年6月の実刑判決が確定。服役し、24年5月に出所した。現在はインターネットメディアを中心に評論活動を行っている。(産経)


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前田元検事

前田恒彦元主任検事の判決は懲役1年6ヶ月

大阪地検特捜部の押収資料かいざん事件で、郵便不正事件の証拠品だったフロッピーディスク(FD)のデータを書き換えたとして、証拠隠滅罪に問われた元主任検事、前田恒彦被告(43)の判決公判が4月12日、大阪地裁で開かれ、中川博之裁判長は「刑事司法の根幹を破壊しかねない行為で極めて強い非難に値する」と述べ、懲役1年6月(求刑懲役2年)の実刑を言い渡した。判決理由で中川裁判長は、厚生労働省元局長の村木厚子さん(55)=無罪確定=らを逮捕、起訴した郵便不正事件の証拠品であるFDデータを改竄した動機について「見立てと整合しないFDが公判に持ち出されて紛糾することや、上司に報告していないことで叱責を受けて信頼を失うことを恐れ、『嫌らしい証拠』であるFDの改変行為に及んだ」と指摘。「(FD元データが印字された)捜査報告書が作成されていなければ、村木さんに重大な不利益が生じる恐れがあった」と述べた。また、前田被告が逮捕直後から起訴内容を認め、深く反省している点など有利な事情に触れた上で、「検察官の有利な方向に証拠を改変した例を見ない犯罪。社会に与えた衝撃の大きさも重く考慮せざるを得ない」と実刑を選択した理由を述べた。(産経新聞)



公判審理の中で前田被告は、首をつる、電車に飛び込むなど自殺を考えたこともあったと発言している。父親が、昨年11月にがんで亡くなっているが、実家(呉)で父親が療養しているとき、マスコミが実家に押し寄せた。田舎での風評もあり、姉は怖くて電話に出られず、逮捕直後に入院したという。

(以下、一部抜粋)
元々、大学院に進学して犯罪心理学の学者になることを考えていたが、恩師の助言と海上保安庁に勤めていた父の影響があったという。また、「家栽の人」という漫画を読んで感化され、司法修習生時代には、検事を志す気持ちになった。

検察組織内のプレッシャーは理想と大きなギャップがあった。たとえば少年事件の場合、大型事件ならかなりしっかりやっているが、恐喝や万引などは検察庁でも左から右に流しているのが実情だった。

前特捜部長の大坪弘道被告(57)と元副部長の佐賀元明被告(50)からの隠蔽の「指示」とその経緯について、上司からの指示で仕方なかった。君のミッション(使命)と指示された。短期間でやってくれと言われたこともあり、非常に強いプレッシャーがあった。この事件(郵便不正事件)は悪質などと言われ、ほかの幹部の発言としても「非常に堅い事件で問題がない。検察の圧勝だ」と報道に出ていたため、確実で迅速な有罪が求められている、と起訴してから追いつめられた。

社会復帰したときは弁護士として法曹界に身を置くことは考えていない。ふるさとに戻っての生活は、近所の人はもちろん、離れた人も私のことを知っているため、戻って暮らすことはできない。

前田元検事のおかげで、取り調べ一部可視化がスタート ~ 米国の完全可視化取り調べ室

最高検は2月23日、東京、大阪、名古屋各地検の特捜部が容疑者を逮捕する事件を対象に、3月18日から取り調べ過程の一部の録音・録画(可視化)を試行すると発表した。郵便不正事件と証拠改ざん・隠蔽事件を受けた再発防止策の一環。裁判員裁判の対象事件では自白事件に限定して実施しているが、試行では否認事件にも範囲を拡大する。録音・録画データを公判に証拠として提出し、取り調べや調書の内容に問題がないことなど、供述の「任意性」や「信用性」を立証することも想定されている。

最高検が公表した試行指針などによると、録音・録画は検察官が作成した供述調書を公判で証拠請求することが予想される事件で実施する。対象となる場面や時期は担当検察官が判断するが、供述した経緯や調書の作成過程、調書の内容についての質問と応答、容疑者が調書に署名する場面や、その直後のやり取り等が想定されている。録音・録画は容疑者に告知して開始するが、容疑者が拒否した場合や、関係者のプライバシー保護が困難な場合などは行わない。国税庁や証券取引等監視委員会、公正取引委員会からの告発事件も対象に含まれる。検察庁は現在、裁判員裁判の対象事件で、容疑者が任意に供述したことを立証するため、容疑者が自白した事件に限って取り調べ過程の一部の録音・録画を行っている。(毎日新聞)


前田元検事による証拠改ざん・隠蔽事件で、検察による強引な取り調べ方法とストーリーに沿った供述調書を勝手に作成されるというでっち上げ体質であることを、多くの国民は知ることができた。取り調べの完全可視化については、米国のネバダ州で行われているものが紹介されている。以下2009年の西日本新聞から。

ネバダ州のワショー郡保安官事務所は、20年以上にわたって取り調べの録音・録画(可視化)に取り組んできた。現在は取り調べのすべてに加え、事務所の廊下や容疑者の房も録画。テープは必要に応じ証拠として法廷に提出される。ネバダ州には可視化を義務付ける法律はないが、州政府の捜査機関である多くの警察署や保安官事務所が、独自の判断で録音・録画を行っているという。

日本の検察、警察には取り調べを録画すると「容疑者が本当のことを話さない」「信頼関係を築けない」という意見が根強い。なぜネバダでは義務でもないのに録画しているのだろうか。同保安官事務所のトップで30年近い捜査経験があるマイケル・ヘイリー保安官は「録画しても容疑者が供述しなくなることはない。録画があればわれわれが適正に取り調べたことを法廷で立証できる」と可視化のメリットを強調する。そして、連邦捜査局(FBI)が可視化を行っていないことを挙げ「メンツにこだわる彼らのメンタリティーは時代遅れだ」と皮肉った。米国では1990年代、DNA鑑定の進歩などによって死刑や終身刑を言い渡された被告の無実が相次いで発覚。陪審員が下した判断が冤罪を生んでいた事実は米国社会に衝撃を与えた。

冤罪事件を調査してきたノースウエスタン大ロースクール(イリノイ州シカゴ)のスティーブ・ドリズィン教授は「陪審員の判断に問題があるのではなく、検察が出す証拠に問題があることが多かった。12時間以上にもおよぶ取り調べで無実の人に自白を強要していたり、目撃証言が間違っていたりしたケースが少なくない」と指摘する。こうした事態を受け、イリノイ州では2003年、当時のライアン知事が州内の100人以上の死刑囚を一括して終身刑などに減刑。殺人事件については取り調べの全過程をビデオ録画するよう義務付けるなどの改革に乗りだした。ワショー郡保安官事務所など一部の捜査機関で行われていた可視化は、今や全米に広がりつつあるという。

日本では被告が「自白を強要された」と裁判で主張しても証拠がなく、水掛け論になることが多かった。裁判長期化の一因にもなっていた。裁判員制度のもと、迅速で市民により分かりやすい裁判を実現するために、日本の検察、警察も取り調べの一部を録音・録画する試行を始めたが、全面可視化にはなお否定的な空気が強い。日本の司法制度にも詳しいドリズィン教授は懸念を隠さない。「日本では容疑者は23日間も拘束され連日、長時間の調べを受ける。もし市民が取り調べのすべてをビデオで確認できないなら、冤罪が生まれるリスクはあまりにも高い」

日本での取り組み 日本では鹿児島県志布志市の県議選をめぐる冤罪事件(2007年3月に12人の無罪確定)などを契機に取り調べの可視化を求める機運が高まった。裁判員制度導入を視野に検察、警察は可視化の試行に踏み切ったが、録音・録画するのは取調官が容疑者に自白調書を読み聞かせる部分など一部のみ。日本弁護士連合会は「捜査側に都合のいい部分だけ録音・録画するのは危険だ」として全過程の可視化を求めている。


取り調べ室

前田元検事がついに大林検事総長を辞任に追い込む

大林宏検事総長(63)が大阪地検特捜部の押収資料改竄・犯人隠避事件などの責任を取り、年内にも辞任する意向を固めたことが16日、分かった。65歳の定年まで任期は約1年半残っており、検事総長が任期半ばで引責辞任するのは極めて異例。後任には笠間治雄・東京高検検事長(62)が有力視されている。

村木厚子・厚生労働省元局長の無罪が確定した郵便不正事件の捜査・公判を検証している最高検が、24日に検証結果を法相の私的諮問機関「検察の在り方検討会議」に報告するのに合わせ、大林氏は自らの辞任で体制を一新する必要があると判断したようだ。

大林氏は今年6月から現職。9月に大阪地検特捜部の元主任検事が郵便不正事件の押収資料を改竄していたとして証拠隠滅罪で起訴され、その改竄を隠蔽(いんぺい)したとして前特捜部長と元特捜部副部長が起訴された。いずれも懲戒免職になったほか、事件当時に大阪地検検事正だった福岡高検検事長や後任の検事正ら幹部3人が懲戒処分を受け、辞任している。

大林氏は郵便不正事件の捜査時、東京高検検事長で決裁には関わっておらず、一連の事件の処分対象になっていなかったため、法務・検察内部に辞任は不要との意見が多かった。大林氏も10月、柳田稔法務大臣(当時)から信頼回復に向け努力するよう異例の指示を受けて謝罪したが、引責辞任については否定的な考えを示していた。

犯人隠避事件の舞台となった大阪地検と大阪高検の幹部らは、「われわれが辞任に追い込んだ」と無念そうな表情を見せた。幹部の一人は「われわれが検察全体の信頼をおとしめ、総長を辞任にまで追い込んだのは申し訳なく思う」と唇をかみ、「身を律して誠実に職務に邁進(まいしん)している。その結果を国民に見てもらい、信頼回復につなげるしかない」と話した。

大林氏は大阪地検前特捜部長らを起訴した10月の会見で「思い切った改革案を講じ、検察のあるべき姿を取り戻すべく、全力を尽くしたい」と続投の意思を表明した。法務・検察内でも、法相の私的諮問機関「検察の在り方検討会議」が改革案を打ち出す来年3月ごろまでは「大林体制」でいくとの見解で一致していた。一方で、検察内には「押収資料改竄・犯人隠避事件を(元主任検事らの)個人の問題として矮小(わいしょう)化してはいけない」との意見があった。

検事総長の引責辞任は検察史上異例のことだ。過去、検察組織は「失敗」をしても抜本的な見直しをせず、こうした“おごり”が未曾有の不祥事を生んだとも指摘される。検事総長の辞意は、ゼロから出直すという検察の強い姿勢の表れともいえる。(産経新聞)


【柳田法務大臣のコメント】
柳田法相は2日夜、大阪地検特捜部の主任検事による証拠改ざん事件で、主任検事の上司だった前特捜部長ら2人が犯人隠避容疑で逮捕されたことに初めて言及。「言葉がない」と失望感をあらわにした。柳田法相は「それを見た瞬間に言葉がもうないと。何やっとんじゃ、こいつらはと。言葉はちょっと悪いですけど、そんな思いがいたしました」と述べた。また、最高検が立ち上げた捜査の検証チームが最終報告をまとめる前に、外部の有識者らの意見を聴く必要性があると主張した。検事総長の責任問題については「今必要なのは、捜査をしっかりやっていただくことだ」と述べ、具体的な言及を避けた。(NNN)


この事件が明るみに出たきっかけは、大阪地検特捜部内からの内部告発で朝日新聞のスクープだったようだ。前田元検事が同僚に対してデータ改ざんをしたことを、「時限爆弾をしかけた」と、しゃべったと言われている。組織内で、彼の強引な手法を危惧する人間がリークすることになったのだ。

この事件を受けて、最高検が再発防止策として、東京、大阪、名古屋の高検に、特捜部が捜査する事件の証拠品をチェックする専門官を新たに置き、特捜部事件について取り調べの一部録音・録画という可視化を導入する方針も固めたという。しかし、一部だけでは完全な可視化にはならず、特捜部に都合のよい編集と供述調書がつくりだされることになるだろう。えん罪がなくなる日は遠い。

しかし、前田元検事が検察という組織を浄化させるきっかけになるとは皮肉なものだ。


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