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地獄の館「ホテルプリンス」火災で7人が死亡

5月13日午前、広島県福山市西桜町の「ホテルプリンス」で火事があり、客の男女7人の死亡が確認された。午前7時前、「ホテルから煙が出ている」と近くを走っていたタクシー運転手から消防に通報があり、その後、火はおよそ3時間後に消し止められた。「ホテルプリンス」は、木造建物と後に増築された鉄筋コンクリート造の建物で作られたラブホテルで19部屋あり、出火当時は20人前後の客が宿泊してた。

このホテルは、建築基準法に基づき広島県が定める防火関連の点検12項目のうち、排煙設備を含む8項目が不適格で、天井から80センチ以内に設置を義務付けている排煙設備は1カ所もなかった。死亡した被害者が宿泊していた部屋の窓にはベニヤ板が張られ、室内に煙が充満しやすい構造だった。廊下や階段も狭くて薄暗く、迷路のようだったという。助かった宿泊客の多くが、窓ガラスをふさいでいたベニヤ板を自力で壊し、外に飛び降りて逃げていたというが、死亡者のほとんどの死因は一酸化炭素中毒とみらる。

「ホテルプリンス」は当時、ラブホテルとして営業許可を受けており、1985年以降、風俗営業法に基づく必要な申請はしていた。また、同市などを管轄する福山地区消防組合消防局も消防法に基づく立ち入り査察を67~03年に1~2年間隔で行い、ほぼ毎回、改善指導をしていたという。2003年9月の査察では、「停電時に屋内消火栓を作動させる電源がない」「避難訓練をしていない」「消防設備の点検報告をしていない」等の問題点を指摘したが、改善されなかったという。

改善指導に従わない場合、消防法に基づき、消防当局が建物の使用を所有者に停止するよう命じるケースも過去にあった。福岡市消防局は2003年10月、自動火災報知機や避難器具の不備などを再三にわたり指導された福岡市内のビルに使用停止命令を全国で初めて出した。しかし、ホテルプリンスに対して福山地区消防組合消防局は同様の命令を出していなかったという。

問題なのは、福山市はこのホテルが違法に改築していたことを、査察で見逃していたということだ。ホテルの建物について、鉄筋部分と木造部分が接合された段階で違法建築に当たるのに、1987年から5回実施した防災査察で見落としていた。これまでは改善を強制できない「既存不適格」としていたが、違法建築であれば、建物の使用禁止命令など強制力を行使して、実質上ホテルを「廃業」させておけば、結果的に死者を出さずに済んだのである。

【ホテルプリンス~建築から火災事故までの経緯概略】
・1960年、木造2階建て建築
・1968年、鉄筋コンクリート4階建て増築
・1974年、ホテル側が市に出した報告書で、二つの建物は一体利用されていたが、シャッターで防火区画さ れ、別々の建物と判断された。
・1978年、ホテルプリンスからの消防法上の報告告が途絶える。
・1987年、査察で木造の1階が駐車場に変えられ、2階に上がる階段が撤去されている旨が記録され一つの建物とみなされる状態だった。(本来は違法建築に当たる)しかし、客室の窓をふさいだベニヤ板など、防火上の8項目の不備だけを問題視し、「既存不適格」とした。
・2005年2月から、福山地区消防組合消防局は、消防法に基づきホテル側に点検報告を求める通知を一度も出さず、事実上放置。同局では内規で2年に1回と定めた定期査察も2003年以降実施せず。
・2011年9月、福山市建築指導課の査察で、排煙設備や階段の幅など8つの改善をホテル側に指導したが、ホテル側から経済的に困難との回答を受ける。
・2012年4月、ホテル所有者からの売却打診。
・2012年5月13日、火災事故。

ホテルプリンス案内図

ホテルプリンス

福山市ホテルプリンス火災01

福山市ホテルプリンス火災05

福山市ホテルプリンス火災04

福山市ホテルプリンス火災

福山市ホテルプリンス火災02

楠妙子