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広島のアンテナショップ戦略は成功したのか

広島のブランド価値の向上や広島ファンの増加を目的として、首都圏でアンテナショップの展開を模索していた広島県だったが、東京の銀座にある広島のアンテナショップ「TAU」の売上が好調だという。紆余曲折だった東京における広島のアンテナショップについてまとめておきたい。


東京における広島ブランドショップが始まる

広島県では、平成10年3月に首都圏における地域ブランドを推進させるため、広島県産品の販売を開始した。場所は東京都渋谷区であるが、新宿駅南口から徒歩1分という立地にある「新宿サザンテラス」内にアンテナショップ「広島ゆめてらす」をオープンし、展開した。

「広島ゆめてらす」では、広島県内の特産品などを販売してきたが、オープンから10年が経過したとき、施設修繕の時期を迎えたことや賃料増加などで、平成22年6月に閉店した。

この「新宿サザンテラス」で展開していた場所は、閉店後、間もなく北海道がアンテナショップとしてオープンしたが、長く続かず数年で閉店したという”いわく付き”の場所だった。東急グループの所有物件だが、賃料値上げ攻勢に見切りを付けた格好だろう。


広島ゆめてらす



ブランドショップコンセプトの方向転換

平成22年11月、広島県は、新たなブランドショプのコンセプトとして、単に特産品の販売だけではなく、広島に関する情報やファンを増加させるという方向に舵をとった。

平成23年、広島県は株式会社都市生活工房事務所にコーディネート業務を委託。同社は店舗のコンセプトから物件選び、県内産品の発掘などを手掛けた。


銀座で勝負

平成24年2月、広島県は上一ビルディングの所有者と賃貸借契約を結んだ(実際には1月31日となっている)が、年間経費は1億9600万円(年間賃料は1億5千万円)で、家賃が高いと判断した「新宿ゆめてらす」(年間賃料は6270万円・平成21年)の2.4倍になる。

延べ床面積は286.71平方メートル(86.7坪)から950平方メートル(287.3坪)と3.3倍に広がり、さらに年間売上でも「新宿ゆめてらす」では最高額が約3億2500万円だったが、銀座「TAU」では約1.5倍となる5億円を目指すというものだった。

平成24年4月、広島のブランドイメージを全国に向けて発信するため、県は7月に東京都の銀座に「広島ブランドショップ」を開設すると発表した。イベントを開催できるスペースなどを備えた施設となる予定で、流行の中心である首都圏に情報発信の拠点を置くことで、若者やメディアを介して「広島ブランド」を広く売り出していく、とした。

平成24年7月16日、「TAU」が株式会社鞆スコレコーポレーションを運営事業者としてオープンした。「TAU」とは広島弁で「届く」を意味する「たう」である。県のPRキャンペーンでは「おしい!」と呼ばれるように、全国では今ひとつ知られていない広島のイメージを「届ける」という意味を込めた。


開店経費など

「TAU」は当初、平成23年度内にオープンする予定だったが、当時の優先交渉権者として決定していたJellyfish.株式会社が辞退し、さらに物件調査に時間がかかった。

内装工事については、長野県に本社を置く守谷商会が約8千万円で請負い、合計で約1億2千万円かかっている。

オープニングイベント開催業務については、電通西日本が約2千万円で請負い、ホームページ構築・保守費用は天満屋アドセンター事業部が約800万円、合計で計5千万円かかっている。

オープニングイベントにはメディアへの露出を考えて、芸能人を多数呼んだ。有吉弘之、戸田菜穂、杉原杏璃、西條秀樹が招待された。


出店リスクと不安

全国アンテナショップ激戦区の銀座で、ビルの地下1階から3階までを借りるという事と、年間売り上げ目標が5億円という高いハードルは、全国のアンテナショップの1割程度しか達成していないという現実が不安視された。

オープンまでの道のりは紆余曲折で、投資額が大きすぎる、リスクが大きすぎる、県は高級なものだけを扱うわけではない、認知が進んでいない、地方自治体によるショップ運営への出費が税金の無駄遣いになっていないか、等という声が出ていた。

このビルは「TAU」がオープンする数年前まで、1階にはブランド衣料品店、地下1階には高級小料理屋が入っていたが、リーマンショックと景気後退により閉店していた。


2012年銀座・上一ビル


その他には市場規模と乗降客数の差という問題もある。これは銀座より新宿のほうが圧倒的に大きい。経済産業省(H19)によると、新宿の年間商品販売額は9147億円、銀座は4832億円と2分の1だ。

アンテナショップの最寄駅の乗降数でみると、JR「新宿」駅が360万人(1日)に対して東京メトロ「銀座」駅が24万人(1日)、東京メトロ「銀座一丁目」駅が3万3千人だから、乗降人数の差は銀座といえども新宿の10分の1以下だ。JR「有楽町」駅あたりからの回遊族をどれだけ呼び込めるかにもよる。

しかし、県商工労働局局長は「ある程度、限界点を超えたことをやらないと中途半端ではやらないのと一緒。ある程度の税金投入はやむをえない」とした。


賃料は妥当か

「広島ゆめてらす」は新宿サザンテラスで286.71平方メートル(86.7坪)を年間賃料6270万円で借りていたから、平均坪単価は6万円である。「銀座一丁目」では、950平方メートル(287.3坪)を年間賃料1億5千万円で借りるということは、平均坪単価は4万3500円になるから、新宿より安いということになる。

また、この界隈の近隣賃料相場は1階で坪10万円、2階で8万円、それ以外は2万円(オープン当初の相場)であるから、坪単価が4万円台というのは、そう高いとは言えない。また、地下1階から3階まで、まとめて借りられるというメリットはある。

ただし、立地的にみれば、銀座一丁目は新宿よりは劣るのは否めない。目抜き通りに位置していないから、認知されるまで時間がかかる。さらに、4フロアも借りて継続的に売上目標がクリアできるのかという不安も残る。

また、上一ビルの外装がB級グルメ広島に似つかわしいのか疑問ではあった。3年経過した今でこそ認知されてきたが、オープン当初から周辺の店舗と比べると、ほんとうに釣り合わないし、何をやっているのかさっぱり分からないというものだった。一見すると、ビルそのものは高級ブティックかオフィスビルにも見えるが、あまり手を加えられないのは、ビルオーナーが派手な外装を好まず、原状維持をしたいという考えがあると推測する。



「TAU」開業後1年間の売上高と「ゆめてらす」の比較
(※報道機関によって発表される数字に差あり)

初年度の売り上げは4 億8100 万円。年間売上目標の5億には届かなかったものの、「ゆめてらす」の年間売上高の最高額3 億2900 万円と比較すると売上高は1.46 倍になった。しかし、来店者数は62 万人と「ゆめてらす」の年間来店者数の最高である68 万人には届いていない。


「TAU」開業2年目から追い風が吹く

しかし、2年目に入った平成25年8月の売上額は3785万円で前年同月比16.7%増となった。

広島カープがクライマックスシリーズ(CS)に進出し、熱戦を展開した10月は4705万円(32.5%増)、J1サンフレッチェ広島が連覇を決めた12月は5935万円(31.3%増)となるなど、平成25年中全ての月で前年実績を上回った。来店者数は平成25年8月~平成26年3月まで、8月を除く全ての月で前年を超えた。

平成26年度になると、来店者は78万1055人(1日あたり2158人)で、25年度の65万2709人(同1803人)から19.7%の上昇。売り上げは7億3748万円(同203万7千円)で、25年度の5億7049万円(同157万6千円)を29.3%上回った。

広島県によると、売り上げアップの要因は、同店の位置する銀座1丁目付近に各県のアンテナショップが集中していると周知されてきたことや、広島カープの盛り上がり、NHK連続テレビ小説「マッサン」で竹原市が舞台となったこと、さらに土砂災害への義援金を同店で受け付けたことなどが挙げられる。

さらに「カープ女子」と呼ばれる女性ファンの拡大が大きいとも話す。カープグッズの売り上げは平成25年11月~平成26年3月が約800万円で、前年同期比約3.6倍。26年4月も約300万円で前年同月比約3.4倍となった。
 
一方で「TAU」への出品を契機に、首都圏での販路拡大につながった事例がこれまで21件あったといわれる。


他の自治体店では

全国のまちづくり活動の支援事業を行っている「地域活性化センター」の調査によると、東京都内にオープンしている「自治体アンテナショップ」の半数超が平成25年度に1億円以上の売り上げを記録した。その中で7億円以上を記録しているショップも2店あった。

同センターによると、調査対象は都内にオープンしている52店(2014年12月)で、このうち28店の売り上げが1億円以上になっており、平成21年度に調査を始めてから最多を記録した。

地方の特産品は大手小売店で扱っておらず、そのためアンテナショップが人気となる大きな理由で、固定ファン、リピーターも増えているという。また、約半数の店舗が飲食施設を併設していて、地元料理を提供するのも魅力の一つだという。

この28店のうち、売り上げが7億円以上だったのが「北海道どさんこプラザ」と沖縄の「銀座わしたショップ」の2店だ。観光地として人気の高い北海道と沖縄だけに、年間100万人以上が来店した。

これに続く「5億円以上7億円未満」も「表参道新潟館ネスパス」「香川・愛媛せとうち旬彩館」「かごしま遊楽館」など5店あった。一方、52店舗のうち11店舗は3000万円未満の売り上げしかなかった。

店舗面積では、100㎡未満の市町村のショップが21店(40.4%)と最も多く、500㎡以上は、表参道新潟館ネスパス(新潟県)、ふくい南青山291(福井県)、広島ブランドショップTAU(広島県)、かごしま遊楽館(鹿児島県)、銀座わしたショップ(沖縄県)だ。


今後の展開

この調子でいくと、「TAU」は売上高で「北海道どさんこプラザ」や沖縄の「銀座わしたショップ」と肩を並べることになる。カープグッズ頼みも有りだが、どこまで牽引できるのか。

同じ東京でも、出店地として選んだ銀座は東京の東地区だ。西地区である新宿や渋谷を中心に回遊する人にとっては、銀座まで電車に乗って買い物というのは少し遠い。できれば、もう1店舗、東京の西エリアに出店するのも一案だ。

新商品の開発もいいが、広島にしか無いものは他にもたくさんある。それが店舗に出品できるものなのか、或いは売上げ抜きで、話題性で集客を試みるのか、方法はいくらでもありそうだ。




都内アンテナショップ売上


都内アンテナショップランキング2007年

ここで、「行ってみたい都内のアンテナショップランキング」というものがあったので参考にしておきたい。調査時期は2007年と古いが、1位と2位は現在でもあまり変わらないようだ。

1位 北海道どさんこプラザ(北海道)
2位 銀座わしたショップ(沖縄県)
3位 新宿みやざき館(宮崎県)
4位 新潟館ネスパス(新潟県)
5位 京都館(京都府)
6位 かごしま遊楽館(鹿児島県)
7位 広島ゆめテラス(広島県)
8位 いわて銀河プラザ(岩手県)
9位 やまがたプラザゆとり都(山形県)
10位 宮城ふるさとプラザ(宮城県)



売上ランキング

また、調査時期は2004年と古いが「売上ランキング」も参考にしておきたい。

1位 銀座わしたショップ(沖縄県) 11億円、2010年度8億8200万円(1日2000人)
2位 北海道どさんこプラザ(北海道) 6億8000万円
3位 かごしま遊楽館(鹿児島県) 6億3800万円
4位 いわて銀河プラザ(岩手県) 4億5700万円
5位 香川・愛媛せとうち旬彩館(香川県・愛媛県) 3億8600万円
6位 新宿みやざき館KONNE(宮崎県) 3億1750万円
7位 にほんばし島根館(島根県) 2億3000万円
8位 あおもり北彩館(青森県) 1億7700万円
9位 銀座熊本館(熊本県) 1億7338万円
10位 京都館(京都府) 1億4103万円